風の音楽~キャンディーズの世界♪
My Favourite CANDIES

 キャンディーズはわずか4年半に過ぎない活動期間で実に多くの楽曲をレコーディングしています。解散から30年近くを経た今でさえ、しばしば耳にしたり、他のアーティストによって取り上げられたりする曲も少なくありません。しかし、これまでに何度も強調しているように、誰もが知っているヒット曲以外でも、ファンに愛され続けている素晴らしい作品がたくさんあるのがキャンディーズです。
 僕自身について言えば、カセットテープ時代、MD時代とそれぞれに自分のキャンディーズ・ベストセレクションを作って、よく聴いていましたが、限られた収録時間の中で選曲するにあたって、たとえ「あなたに夢中」や「年下の男の子」は外しても、これだけは外せない、という作品がいくつかあります。たとえば、「かーてん・こーる」「グッドバイ・タイムス」「気軽な旅」「秋のスケッチ」「片想いの午後」「悲しきためいき」「めぐり逢えて」「季節のスケッチ」「MOON DROPS」「素敵な魔法使い」などなど…。挙げればキリがありません。彼女たちの音楽を聴けば聴くほど、大好きといえる曲が増える一方、というのが現実です。幸い今はデジタル・オーディオの時代になって収録時間を気にする必要がなくなったので、僕の携帯プレイヤーの中には百数十曲のキャンディーズ作品が入っています(どんどん増えています)。
 というわけで、ここではシングルにはなっていないキャンディーズの作品の中から僕のお気に入りについて気ままに書いていきたいと思います。まさに思いつくままに紹介していくつもりで、年代順に、などということは考えておりませんので、その辺はご了承願います。(随時更新予定)

 2015年11月4日からキャンディーズの全アルバム18タイトル、ならびに全シングル18タイトルの配信がスタートしました。楽曲数はのべ341曲。このページで紹介した曲もすべて聴けるようになりました。
 こちらからどうぞ。

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  気軽な旅 作詞:喜多條忠  作曲:常富喜雄  編曲:馬飼野康二  

 まずは僕が勝手に当サイト Acoustic Touring のテーマソングということにしている「気軽な旅」です。アルバム『キャンディ・レーベル』(1977.8.1)のA面1曲目に収録されています。
 ギター中心の軽快なイントロから典型的なキャンディーズ・サウンド。そして、「色づく山々振り向きながら私を乗せたディーゼルカーは青いドレスの裾縫うように海岸づたいを走っています♪」ラン、スー、ミキがユニゾンで明るく爽やかに秋の旅の情景を歌います。主人公はひとり旅の女の子。旅の楽しさと同時にちょっぴり淋しさも感じています。
  海からの風に乗りあなたからは リンドンリンドン遠ざかるのに
  私の心はあなたの所へ リンドンリンドン近づくようです

 
このパートは前半をランがソロで、「リンドンリンドン」以降をミキスー(とランも?)が歌うパターンの繰り返しです。リンドンリンドンという表現がなんともユニークです。軽やかな疾走感を伴ったバックの演奏は彼女の気持ちとは無関係に走り続ける列車を表現しているようです。
  ひとりの旅は気軽な旅ね それでも知らない街並を
  遠く眺めてあなたのことを かたときたりとも忘れはしない

 
最後はまたユニゾンです。
 とにかく、この曲、中学生の時に初めて買ったキャンディーズのレコード(ベスト盤『CANDIES SHOP』)で出会って以来、キャンディーズの歌だけでなく、バックの演奏にも耳を奪われっぱなしです。軽快なリズムセクション、3人のヴォーカルに合の手を入れるギター、リズミカルなピアノとチェンバロ、秋風のようなストリングス、そして間奏やエンディングでの3人のスキャットもとても魅力的です。



  秋のスケッチ 作詞:竜真知子  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右   

 アルバム『その気にさせないで』(1975.10.1)に収録された「秋のスケッチ」。これは傑作です。キャンディーズの音楽面での育ての親ともいうべき作曲家・穂口雄右氏も、そしてキャンディーズの3人も、キャンディーズでなければできないサウンドをめざしていたといいますが、この曲などはそれが理想的な形で結実した最良の成果といえるのではないでしょうか。
 季節は秋。それも初秋ですね。主人公の女の子は恋人と別れてしまったのでしょう。港の見える喫茶店にひとりでいます。楽しかった夏が過ぎ、窓の外の陽射しも吹く風も今はもう秋なのに、季節の移ろいのようには恋の終わりを受け入れられない、そんな心情を歌った曲です。
 では、聴いてみましょう。曲はボサノバ調のリズム。冒頭のつややかなストリングスがまさに秋風を思わせます。さまざまなパーカッションは虫の声(キリギリス?)を表現しているのでしょう。そこにキャンディーズの「シャバッダ~シャバッダ~♪」という美しいスキャットコーラスが聞こえてくると、もう極上のキャンディーズ・サウンドの出来上がりです。
 そして、歌いだしはミキのソロ。彼女の少しハスキーで涼しげな声は秋のひんやりとした空気感を醸し出すのにピッタリです。そこにあたかも風のささやきのようにランスーが「フッ」という声をはさみますが、これもハモっています。そして、コーラスへ。ここでは上からランスーミキの3声にランがさらに声を重ねていて、4声になっています。そして、ランの声がすべてを包み込むように浮かび上がって、そのまま彼女のソロへ。曲の途中でメインヴォーカルが入れ替わるのはキャンディーズによくあるパターンですが、この曲のコーラスアレンジは本当に素晴らしいです。そして、最後はまた3人のコーラスでしめる。
 ジャズっぽいギターによる間奏に再びキャンディーズのスキャットが加わって、2番はまたミキのソロから1番とほぼ同じ展開となります。
 非常に難度の高いコーラスをバッチリきめるキャンディーズ。そして、バッキングのギターやエレクトリックピアノ、ストリングス、パーカッション等の使い方のセンスも抜群で、この爽やかで心地よい音楽にいつまでも身を委ねていたくなります。繊細で精巧なガラス細工のような音楽。個人的にはこの曲はパーフェクトです!

 穂口氏も「この曲をシングルで出したら、彼女たちがただのアイドルグループではないことを世間にアピールできるのにな」という当時の思いをのちに綴っています(穂口雄右・増島正巳『小説春一番・キャンディーズに恋した作曲家』(マガジンランド、2017年)。


  片想いの午後  作詞:竜真知子  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右   

 この曲もアルバム『その気にさせないで』に収録されており、作詞・作曲も「秋のスケッチ」と同じコンビによるものですが、こちらはしっとり系ですね。僕がこの曲を聴いたのはライヴ盤『キャンディーズ10,000人カーニバル』に収録されたライヴ・ヴァージョンが最初でしたが、当時から大好きな曲でした。
 ベース、エレピ、ギター、ハイハット、タンバリン、ストリングスによる静かなイントロに続いてリードヴォーカルのランがソロで歌いだし、ミキスーがそっとコーラスを重ねます。

 長い手紙書いたあとで そっとそれを燃やし見つめています
 窓をつたう雨のしずく ひとつひとつあのひとに届けたい Hum...Hum...
 それはひとりごと


 書いて消して消して書いた宛名だけが燃えず残ってるのは
 遠すぎると知ってながらあのひとへの想い忘れられないせいでしょうか


 文学少女だったランのイメージにピッタリの詞ですね。残響音をいかしたエレクトリックピアノの一音一音がまさに「窓をつたう雨のしずく」のようで、心の奥底に響きます。僕はエレピの音って好きなのですが、それはこの曲を聴いたのがきっかけだったように思います。
 そして、このあとサビのコーラスとなりますが、この曲では何よりもランの声の魅力、とりわけファルセットの美しさを味わうことができます。


  バイ・バイ・センチメンタル  作詞:竜真知子  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右  

 「片想いの午後」とくれば、アルバム『その気にさせないで』で同曲の後に収録されている「バイ・バイ・センチメンタル」も忘れることはできません。この曲も僕は『10,000人カーニバル』のライヴ・ヴァージョンを先に聴きました。そして、この曲もまたまた竜=穂口コンビによるものです。
 リード・ヴォーカルはタイトルにふさわしく「ちょっぴりセンチなスー」。ピアノとヴァイオリンによるイントロはクラシカルであると同時になんだかちょっと「神田川」を思い出したりもします。ピアノはエレピではなくアコースティックですね。
 古いノートの走り書きはあなたの似顔とハートのマーク
 ピアノとストリングス主体の演奏にのってスーが幼い恋の記憶をたどりつつ、少女から大人へと移り変わっていく心情を歌います。甘い声がいい雰囲気です。やがて、ベースやドラムも加わって、だんだん盛り上がり、サビはワルツになって3人のコーラス。ここでも主旋律はスーが歌っていますが、ランの高音ファルセットも印象的。そして、最後をしめるミキのルルルルルルル~♪というスキャットもいい感じです。


  帰れない夜  作詞:竜真知子  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右   

 ここまでくれば、『その気にさせないで』からもう1曲。しかも、またまた竜=穂口コンビによる作品です。ただ、詞も曲もかなり雰囲気は違います。
 この曲はディスコ風のリズムですね。こういう曲は現在なら打ち込みの安っぽいデジタルサウンドになってしまうのでしょうが、そうでないところがこの曲の魅力です。ハイハット主体のドラムとベースが生み出すアップテンポのリズムにストリングスやブラスが加わり、ギターのカッティングやジャズっぽいエレピもカッコイイです。そして、キャンディーズによるDuDuDuDu!(っていってるんですかね?)というスキャットも!
 リードヴォーカルはミキランスーはサビの部分でミキを追いかけるようなコーラスをつけています。

 なんとなく退屈であなたに誘われたの 新しいバイクに乗ったあなたに誘われたの
 なに事もおこらない そんな毎日からぬけ出したかった

 (中略)
 私、いい子すぎたのね きっと、いい子すぎたのね
 若さをどこかにとじ込めていたの あなたに出会って初めて気づいた
 何かが変わりそう 私も今日から


 この手の歌詞をもつ曲はキャンディーズにはいくつかありますが、ミキが歌うケースが多いような印象があります。


  愛のとりこ  作詞:林春生  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右  

 アルバム『年下の男の子』(1975.4.21)のラストに収録されている曲ですが、僕は2004年に出た『CANDIES PREMIUM~All Songs CD Box』で初めて聴きました。タイトルのイメージから伝統的な歌謡曲風の作品なのかと思っていましたが、いや、驚きました。キャンディーズの歴史の中では初期から中期への転換点に位置するアルバムですでにこんなスゴイ曲をやっていた、ということに。後期の曲といってもいいほど完成度の高い作品で、イントロだけで、これが名曲であることが分かります。
 この曲もリードヴォーカルはミキランのファルセットを中心とするコーラスとの掛け合いで曲は進行し、「死んでもいい 恋のためならば」と愛に生きる女の情念を感動的に歌っていきます。至極のコーラスに寄り添いつつ徐々に昂揚していくアルトサックスも感情の高まりを表現しているようで、耳に残ります。


  インスピレーション・ゲーム  作詞:阿木燿子  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右

 これはキャンディーズ解散後に発表された作品です。解散コンサート「ファイナル・カーニバル」のライブ盤『キャンディーズ・ファイナル・カーニバル・プラス・ワン』(1978)はLPでもCDでも3枚組で発売され、2枚がライブ、1枚がスタジオ録音という構成でした。そのスタジオ盤にこの曲も収録されています。ラストシングル「微笑がえし」と同じ阿木=穂口作品で、同時期にレコーディングされたものと思われます。まさにキャンディーズとして最後のレコーディング作品の1曲で、この時期の作品には「かーてん・こーる」「グッド・バイ・タイムス」など同じコンビによる珠玉の名曲が揃っています。本当に素晴らしい作品ばかりです。
 で、冒頭からエレクトリックドラムが使われている「インスピレーション・ゲーム」では80年代を先取りしたようなサウンドを聴くことができます。また、作詞においては、タイトル通りに単語の羅列によってイメージを膨らませる手法が用いられています。なかには時代を感じさせる言葉も出てきますが(たとえば、アメラグとか金髪娘とか)。
 しかし、何よりもこの作品を魅力的にしているのはキャンディーズの声です。僕は彼女たちの魅力は声のハーモニー、その色合いの美しさだと思っています。彼女たちより上手いコーラスグループはいくらでもあると思いますが、キャンディーズのような声で歌うグループはほかにいないと思うのです。彼女たちの声の個性。これこそが武器であり、最大の魅力でもありました。
 この「インスピレーション・ゲーム」でもそれは十分に発揮されています。たとえば、「青い~瞳の~金髪娘♪」の部分。ここでのハーモニーの色合いの主調はランの声ですが、この美しさ、そしてカッコよさはやはり3人の声が一体になることによって初めて生まれてくるものでしょう。本当に聞きほれてしまいます。
 なお、この曲は現在では2枚組CD『キャンディーズ・ゴールデン☆ベスト』で聴くことができます。


  キャンディーズ1676日  作詞:島武実  作曲:穂口雄右  編曲:穂口雄右

 この曲はシングル「わな」と同時に発売されたLP5枚組『キャンディーズ1676DAYS』(1977.12.5)に収録されています。このアルバムは3枚が過去のベスト盤、2枚が77年10月~11月にかけての新録音という構成で、解散宣言後のキャンディーズのコーラスグループとしての充実ぶりを示す楽曲を聴くことができます。
 その中で、キャンディーズのデビューから解散までの活動期間を意味する「キャンディーズ1676日」は11分以上にも及ぶ3部構成の組曲であり、作・編曲家としての穂口氏渾身の一曲でしょう。作詞は島武実氏で、つまり「わな」と同じコンビによるものです。
 ラストシングル「微笑がえし」の歌詞にキャンディーズの過去のヒット曲のタイトルが織り込まれていることはよく知られていますが、この「キャンディーズ1676日」ではイントロや間奏部分に過去の曲のメロディーが多彩なアレンジで次から次へと登場するのが、ひとつの聴きどころです。もちろん、キャンディーズもソロ、ユニゾン、コーラスで素晴らしい歌声を聞かせてくれます。最初のパートはミドルテンポで始まり、一気に加速する中間部はアップテンポで展開し、最後はしっとりとスローに。抽象度の高い詞も感動的です。そして、3人のスキャットコーラスでドラマチックに盛り上がった後、ソロピアノによって曲はちょっぴり淋しげな余韻を残しつつ静かに消えていきます。
 この曲も2枚組CD『キャンディーズ・ゴールデン☆ベスト』に収録されています。


  涙の乗車券  作詞・作曲: John Lennon & Paul McCartney  編曲:竜崎孝路  

 キャンディーズは初期から解散までかなりの数の洋楽をレコードやライブでカバーしていますが、これは2ndアルバム『危い土曜日/キャンディーズの世界』(1974.6.21)に収録されています。僕はこの曲を「危い土曜日」「なみだの季節」の両シングル曲に「涙の乗車券」と「イエスタディ・ワンス・モア」を加えた4曲入りのレコードで初めて聴きました。中学2年生の時のことで、「涙の乗車券」(Ticket to Ride)という曲自体、このレコードで知ったのだと思いますが、まずは曲の美しさに惹かれました。あとでビートルズのオリジナルを聴いた時はかなりイメージが違っていて、ちょっとガッカリした記憶があります。その後、カーペンターズ・ヴァージョンを聴き、キャンディーズはこちらのアレンジに基づいていることが分かりました。カレン・カーペンターのヴォーカルは言うまでもなく魅力的ですが、ミキとランが交互に歌うキャンディーズ・ヴァージョンもなかなか素敵です。
 リードヴォーカルはミキで、出だしは彼女のソロ。続くサビの部分のコーラスではランがメインパートを歌い、スーはカーペンターズ版にはない高音部を澄んだ声で歌っています。ビートルズやカーペンターズを超えているなんて言うつもりはありませんが、キャンディーズならではの魅力は十分に感じられます。
 イントロのピアノ、終盤のエレクトリックピアノのくぐもったサウンドがかえって神秘的な雰囲気を感じさせるようでもあります。


  悲しきためいき  作詞 山上路夫  作曲 宮川泰  編曲 竜崎孝路  

 LP『年下の男の子』(1975.4.21)に収録され、シングル・カットの候補にも挙げられた名曲です。実際、ファイナル・カーニバルまでほとんどのステージで演奏された人気曲で、キャンディーズの3人にとってもお気に入りの曲だったようです。彼女たちの秘蔵映像を集めたDVD4枚組『キャンディーズ・トレジャー』(2006)にも異様にかっこいいライヴ・パフォーマンスが収録され、ヒット曲メドレーに交じっても、ひときわ異彩を放っています。
 ヘヴィなイントロからカッコよくて、それだけでシリアスな歌の世界に引き込まれます。

 夜汽車の窓 私は額をつけて あなたの街見つめて ためいきつくの

 パワフルな演奏にのってミキがリードをとり、ランスーがコーラスをつけるのですが、一聴したところ、どちらが主旋律なのか分からないような複雑なコーラス・ワークが展開されます。ミキの突き抜けるような高音が印象的です。
 ちなみに、この曲はキャンディーズがレギュラー出演していたTVバラエティー『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』の中のミニドラマ「めざめれば秋」の主題歌にもなっていました。
 なお、この曲は現在出回っている2種類の2枚組CDベストのいずれにも当然のように収録されています(片方はライヴ・ヴァージョン)。


  20才の頃  作詞 竜真知子  作曲 宮本光雄  編曲 船山基紀

 LP『キャンディーズ1 1/2』(1977.4.21)に収録された軽快な曲です。
 この曲はいきなりサビのコーラスから始まります。このパートは主旋律をスーが歌い、ランがファルセットで高音部、ミキが低音部を担当しています。
 そして、コーラスに続いてランのソロ。この部分のランはアイドル唱法全開という感じで、僕は聴くたびに「青い珊瑚礁」あたりの松田聖子を思い出してしまいます。

 鏡の中の私電話のベルが鳴るたびにひとりときめくのよ(1番)

 ちょっと気取って熱いカフェオレ飲めば指先がなぜか燃えているわ(2番)

 今までそうよずっと心の奥で暖めたそれは憧れなの(3番)

 1・2・3番それぞれのランのソロ・パートの最後の語尾がちょっと上がるところなどに特にそれを感じます(なかでも2番の「燃えているわ」の部分は特に…)。ランちゃんの歌唱法(の一部)は聖子ちゃんに受け継がれていたのだなと思うわけです。といっても、僕は松田聖子のレコード・CDは買ったことがなく、ちゃんと聴いていないので、あくまでもイメージに過ぎないのですが…。ランの前にそのような歌い方をしていた人がいるのかどうかも分かりません(たぶん、誰かいたのだろうとは思いますが…)。いずれにしても、これはキャンディーズの3人の中ではランだけの芸風ですね。


  恋のあやつり人形  作詞 竜真知子  作曲 馬飼野康二  編曲 馬飼野康二  

 LP『春一番』(1976.4.1)に収録されたこの曲はまず何といってもイントロですね。聴く者の心を鷲掴みにするような強烈なインパクトがあります。それから、もうひとつは振り付け。3人が最初から最後まで人形になりきって、顔は無表情のまま歌は表情豊かに、というのがポイントです。ライブでもたびたび演奏された人気曲というのもよくわかります。この曲がシングルになっていたら、子どもたちの間で流行ったのではないでしょうか。小学校あたりで女の子たちが真似して踊っている光景が目に浮かぶようです。ただ、実際には子どもたちの目に触れる機会はほとんどなかったはずです。僕も曲は前から知っていましたが、キャンディーズが実際に歌っている映像を見たのは『キャンディーズ・トレジャー』が初めてでした。
 なお、この曲は2枚組CD『ゴールデン☆ベスト』で聴くことができます。


  めざめ  作詞 森雪之丞  作曲 小六礼次郎  編曲 小六礼次郎

 大変美しいハーモニーが聴けるこの名曲はスタジオ・ヴァージョンが5枚組LP『キャンディーズ1676DAYS』(1977.12.5)に収録されていますが、実際には1年前の東京・蔵前国技館でのキャンディーズ・カーニバルVol.2(1976.10.11)のために作られた曲で、アンコール前の本編ラストで歌われました。この音源がライブアルバム『キャンディーズ・ライブ』(1976.12.5)に収められています。

「キャンディーズ・カーニバルVol.2のテーマともいえるし、私達にとって内容のある歌として心に残っています。音域が広くスローな曲なので、練習に時間をかけました。歌の途中の言葉も私達の気持ちを率直に表わしたものです」ラン=『キャンディーズ卒業アルバム』、シンコー・ミュージック、1978年2月)

 オリジナルのライブ・ヴァージョンと1年後のスタジオ・ヴァージョンとでは当然、アレンジが異なり、歌詞も若干違うのですが、一番の違いはランが言っている通り、ライブでは曲中にセリフが入っていることです。そして、これが後の解散宣言における「普通の女の子に戻りたい」発言を示唆するものとも受け取れる、非常に心に響く言葉なのです。
 曲中でまるで夜風のようなフルートにのせてランが語ります。

 ライトを浴びて歌うようになってから、もう3年。
 ひとが喫茶店でお茶を飲んだり、公園を散歩するのを見て、
 それがとっても羨ましくて…
 なぜ自分だけ歌なんて歌っているんだろうって悩んだこともありました。
 恋人もいないのに、なぜ愛が歌えるんだろうって…
 でも、みんながこうして楽しんでくれている!
 声を出して私たちを励ましてくれている!
 そうです。みんなが教えてくれたんです。
 愛は…愛は…歌うことだと…。


 このライブは映像も残されているはずなので、ぜひDVDで完全版を発売していただきたいものです。


 素敵な魔法使い  作詞:藤村美樹  作曲:藤村美樹  編曲:馬飼野康二

 2枚組LP『キャンディーズ1 1/2』(1977.4.21)に収録されたミキの作品です。このアルバムはA面が「やさしい悪魔」「哀愁のシンフォニー」を含むオリジナル作品、B面が洋楽カバー、C面にラン・スー・ミキの自作曲を2曲ずつ、そして、D面には3人の直筆サインという構成でした(C面の3人の自作曲には補作詞:竜真知子、補作曲:馬飼野康二とクレジットされています)。キャンディーズ・ファンならはずせない傑作アルバムといえるでしょう。
 その中でC面3曲目に登場するのが、この「素敵な魔法使い」。これはいいですねぇ。ジャズっぽいノリの軽やかなサウンドにのせてミキがささやくように歌います。そして、後半のフルート・ソロもさわやかで、いい感じです。

 あなたは素敵な魔法使い 私をこんなに変えちゃった
 今までの私とはどこか何かちがう 前までは男の子みたいだった私
 あなたに出逢って みるみる女の子らしくなったのよ


 デビュー当時は「ちょっとボーイッシュ」だったミキもこの歌詞の通り、この頃にはすっかり女らしくなっていましたね。ということは、実際に素敵な魔法使いに出会っていたのかな、なんて想像してしまいますが、ファンにしてみれば、「ミキちゃん、あなたこそ素敵な魔法使いです!」と言いたくなるような名曲です。


  さよならの朝  作詞:藤村美樹  作曲:藤村美樹  編曲:馬飼野康二

 これも『キャンディーズ1 1/2』に収録されたミキのもうひとつの自作曲です。一転して、悲しい別れの歌です。

 朝もやがたちこめる 暗い部屋の片隅
 届かないこの想い 今日も胸にしみるの
 灰色の街角に この悲しみ捨てたい
 さよならを言う前に 愛に気づけばよかった


「ミキのメモ/自作の曲で、これは私がナーントお風呂に入ってる時、最初のメロと詩とイメージが浮かんできて、お風呂からあがってからさっそく作った曲。私の大好きなボサノバ調です。実は少しランに詩を手伝ってもらいました。ご迷惑をおかけしてスミマセン!」(『キャンディーズ卒業アルバム』)

 ミキの言う通りのボサノバ調ながら、ほの暗いムードが漂う曲で、ミキのヴォーカルには凄みすら感じます。でも、ミキランが一緒に言葉を紡いで、このような歌詞を生み出したのかと思うと、そういう光景を思い浮かべるだけで、なんだか心が温まるような気がします。
 ちなみにミキの作曲法というのは、まず曲のイメージが浮かんだら、ピアノを弾きながら曲を仕上げ、カセットテープに録音し、自分で採譜するという手法だったそうです。
 それにしても、こういう傑作を生み出したミキが、キャンディーズ解散後、1983年に自作曲5曲(作曲のみ)を含むアルバム『夢恋人』を残しただけで、才能を封印してしまったのがなんとも惜しまれてなりません。

 ちなみにテレサ・テンのアルバム『ふるさとはどこですか』(1977.2)に同名異曲の「さよならの朝」という歌が収録されていますが、この曲にラン藤蘭というペンネームで詞を書いているのは案外知られていない事実かもしれません(作曲は小谷充)。キャンディーズの担当ディレクターだった松崎澄夫氏がテレサ・テンも担当していたことから実現したものですが、キャンディーズのメンバーが他の歌手に詞を提供した唯一の例ということになります。それ以前にミキが他の二人に先がけて「二人のラブトレイン」(LP『その気にさせないで』収録)を作詞した時のペンネームが藤美樹だったので、姉妹のように名字を藤で揃えたのでしょうか。


  卒業  作詞:ちあき哲也  作曲:井上忠夫  編曲:竜崎孝路   

 「卒業」という曲は非常にたくさんありますが、これは誰かの曲のカバーではなく、キャンディーズのオリジナルです。作曲は元ブルー・コメッツの井上忠夫。LP『年下の男の子』(1975.4.21)に収録され、のちに『みごろ! たべごろ! 笑いごろ!!』の中のミニドラマ「美しき伝説」の主題歌として使われました。
 ずっと仲の良い友達だった相手に密かな恋心を抱いていた女の子の切ない気持ちを歌っています。卒業式を境に二人は離ればなれになってしまう。「好き」と言いたいけれど、ずっと友達だったがゆえに、今さらそんなことを言い出すのはあまりに不自然。彼女はそう考えて、結局、何も言えないまま卒業しようとしている。そんな歌です。今の中学・高校生でも卒業式で歌ったら、けっこう胸にしみるのではないでしょうか。
 ホーンを多用したイントロもとてもキャッチーで、この曲ももしシングルカットされていたら、ヒットしたのではないかと思います。
 リード・ヴォーカルはランですが、サビのコーラスではメインがミキランミキとめまぐるしく入れ替わるところも聴きどころです。


  優しいだけじゃいや  作詞:竜真知子  作曲:加瀬邦彦  編曲:竜崎孝路   

 これもLP『年下の男の子』に入っています。作曲は元ワイルドワンズの加瀬邦彦。
 メインヴォーカルはスー。ストリングスによる短いイントロに続いて、いきなりサビのコーラスから始まり、ランミキの順にごく短いソロをとった後、スーが甘く美しい声で歌い、ランミキがハーモニーを重ねていきます。スーの歌唱力が光りますが、ランミキの持ち味も十分に発揮されていて、キャンディーズの魅力全開の曲といっていいでしょう。
 そして、終盤は、歌が主で演奏はあくまでも従、という伝統的な歌謡曲の常識からすればありえないような展開をみせつつ、やがてフェイドアウトしていきます。キャンディーズのサウンドはラン・スー・ミキの歌とバックの演奏が主と従の関係に終わらず、両者一体となって絶妙のバランスの上に成り立っているところが魅力のひとつです。当時、アイドルや歌謡曲には見向きもしないようなロック少年たちをもとりこにしたと言われるのはこのあたりに秘密があるのでしょう。そして、この路線をより本格的に追求したのがライヴにおけるラン・スー・ミキ+MMPによる拡大版キャンディーズということになります。


  シュガー・ベイビー・ラブ  作詞・作曲:Tony Waddington,Wayne Bickerton  訳詞:山上路夫  編曲:穂口雄右   

 LP『なみだの季節』(1974.12.10)に収録されたカバー曲。オリジナルは1974年に英国でヒットしたThe Rubettesのデビュー曲です。その後もWinkのデビュー曲になるなど、多くのアーティストがカバーしており、ビールのCMやドラマの主題歌にも使われたお馴染みの曲です。その中でもキャンディーズはオリジナルと同じ年に逸早く取り上げているので、恐らく日本では最も早いカバーということになるのでしょう。ただ、あくまでもアルバムの中の1曲だったため、このキャンディーズ・ヴァージョンはあまり話題にはならなかったと思われますが。
 アレンジはほぼオリジナルを踏襲しており、スピード感のあるイントロから珍しく男性コーラスが起用されています。そして、リードヴォーカルはミキ。日本語詞で歌っています。失恋の歌ですが、彼女らしい伸びやかな声と爽やかなサウンドによってジメジメしたものは感じさせず、甘酸っぱい青春ソングになっています。なお、曲中にミキによるセリフも入っています(オリジナルもセリフ入り)。


  ラッキーチャンスを逃さないで  作詞:竜真知子  作曲:宮本光雄  編曲:渡辺茂樹    

 LP『春一番』(1976.4.1)のラストに収録された曲で、シングルになったわけでもないのに、ある意味でキャンディーズの隠れた有名曲と言えるかもしれません。というのも、恋愛バラエティー番組「プロポーズ大作戦」のテーマソングとしてキャンディーズ解散後も1985年の番組終了まで毎週茶の間に流れ続けていたからです。つまり、キャンディーズの曲の中では最も長期にわたって多くの人が定期的に耳にしていたわけで、その意味ではかなり一般的な認知度の高い曲ではないでしょうか。ただ、曲は知っていても、キャンディーズが歌っていたとは知らずに聞いていた人も少なくないかもしれませんが…。
 キャンディーズは曲によって声や唱法をいろいろ使い分けていますが、この曲などは3人ともとてもキュートな声と唱法で、メロディーも親しみやすく、彼女たちの女の子らしさ、かわいらしさが前面に打ち出されています。個人的には「のっぽのあいつ 太めのあいつぅ♪」の「つぅ」の部分の語尾が上がるところが好きです。
 中間部ではミキがソロをとっています。
 この曲は2枚組CD『ゴールデン☆ベスト』に収められています。


  銀河系まで飛んで行け!  作詞:喜多條忠  作曲:吉田拓郎  編曲:馬飼野康二

 5枚組LP『キャンディーズ1676DAYS』(1977.12.5)に収録された、「やさしい悪魔」や「アン・ドゥ・トロワ」と同じ喜多條=拓郎コンビによる作品です。
 ストリングスやブラスによるイントロで始まるノリのよいポップなサウンドに乗せて、冒頭から「あいつなんか あいつなんか 銀河系まで飛んできゃいいのに♪」という印象的なフレーズが歌われます。

 「始めたばかりの二人の恋は夜空にまかれた銀のバラ 近づく想いは傷つけられて 涙をふくたび 綺麗になった♪」

 「行方を知らない二人の恋は夜空に旅立つ銀の船 想いを運べば嵐にあって 沈んでゆくほど やさしくなった♪」

という歌詞は、恋の旅路の難しさ、不安、それにもかかわらず逃れ難い甘美な魔力といったものがテーマになっているのでしょう。だから、あいつなんか銀河系まで飛んで行け、と言いながら、結局は「逃げても 逃げても まぶしいまなざし♪」となるわけですね(たぶん)。
 これもシングルにしてもよさそうな名曲だと思います。ということで、直後にキャンディーズのかわりに梓みちよが歌ってシングルになっています(発売は1978.1.21。タイトル表記は「銀河系まで飛んでいけ!」)。競作といったところでしょうか。さらに後に中原理恵もカバーしています。
 この曲も『ゴールデン☆ベスト』で聴くことができます。


  銀河空港   作詞:竜真知子  作曲:馬飼野康二  編曲:馬飼野康二

 「銀河」つながりでもう一曲。これも『キャンディーズ1676DAYS』の収録曲です。そして、これは後期キャンディーズにしては妙に歌謡曲っぽいというか、ほとんど演歌ですね。なので、僕も最初はそんなに好きというわけではなかったのですが、最近になってかなり気に入って、よく聴いています。
 1番はAメロをラン、Bメロをスー、2番はAメロをミキ、Bメロをスーがそれぞれソロで歌い、いずれもサビは3人のコーラスとなります。このコーラスの部分がすごく好きです。
 ミキも次のように言っています。
「歌謡曲っぽくて好きな曲なんですが、唄う時に歌謡曲風に歌うのがムズカシクテ、コブシで苦労しました。でも、コーラスはキャンディーズサウンドでしょ?」(『キャンディーズ卒業アルバム』)
 この発言からミキが“キャンディーズ・サウンド”というものを意識していたことが解ります。実際、キャンディーズ・サウンドとは何か、どうあるべきか、ということについて最も自覚的だったのはミキだと思います。ランはそういうことに自覚的であるか否かにかかわらず、彼女の声はキャンディーズ・サウンドの不可欠な要素であり、スーはあまりそういうこだわりは持たずに天真爛漫に歌っていた、というのが僕の印象です。
 この曲もまた『ゴールデン☆ベスト』に入っています。


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