Acoustic Touring
風の音楽~キャンディーズの世界♪

キャンディーズのレコードを聴いてわかったこと





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 キャンディーズ解散の翌日(1978年4月5日)、僕は初めて彼女たちのレコードを買いました。『CANDIES SHOP』(1977.11.1発売)という14曲入りのベスト盤です。収録曲は以下の通り。

A面:年下の男の子~気軽な旅~春一番~アン・ドゥ・トロワ~ハート泥棒~その気にさせないで~哀愁のシンフォニー
B面:やさしい悪魔~夏が来た!~あなたに夢中~暑中お見舞い申し上げます~あなたのイエスタデイ~なみだの季節
   ~ハートのエースが出てこない


 エレガントなキャンディーズの写真ジャケットの上にカラフルなイラストをあしらったポスタージャケットを巻いたこのレコード。これまた楽しいイラストがいっぱいのブックレットを眺めながら、毎日毎日大切に聴いたものです。

 

 14曲のうちシングルA面曲である12曲はもちろん全部知っていました。初めて聴く曲が2曲ありました。「気軽な旅」「あなたのイエスタデイ」です(ちなみに前者はアルバム『キャンディ・レーベル』収録、後者はシングル「やさしい悪魔」のB面曲です)。そして、この2曲が他のヒット曲に負けないぐらい良い曲なのです。
 「気軽な旅」については、すでに書きましたが、「あなたのイエスタデイ」もまたぜひ聴いていただきたい名曲です。吉田拓郎がキャンディーズのために書いた4曲のうちの1曲で、おそらくもっとも吉田拓郎らしい曲調でしょう(他の3曲は「やさしい悪魔」「アン・ドゥ・トロワ」の両シングル曲と「銀河系まで飛んで行け!」)。リードヴォーカルがミキというのも僕にとっては新鮮な感じでした(シングル曲では「わな」がありましたが)。まだ少し肌寒い春先に終わりゆく恋をうたった歌詞は中学生にも心に染みました。

 直後にもう1枚、レコードを買いました。キャンディーズのラストシングル「微笑がえし」です。解散後に買ったので、僕はこの曲がキャンディーズ史上最初で最後のNo.1ヒットに輝くという快挙にはまったく貢献していないわけですが、それはともかく、ここでまた新たな出会いが待っていました。ファンの方ならすでにお察しの通り、B面の「かーてん・こーる」です。「微笑がえし」の裏側にまさかこんなにも素晴らしい曲が隠れていたとは!(NHKの『わが愛しのキャンディーズ』でも「あなたのイエスタデイ」と「かーてん・こーる」がBGMとして使われていましたね)。 究極のキャンディーズ・コーラスによって歌われる、この夢みるように美しい曲を聴いてしまうと、もはやキャンディーズの魅力から逃れることはできません。A面の「微笑がえし」ももちろん名曲ですが、僕はそれ以上に「かーてん・こーる」に魅せられ、何度も何度もB面に針を落としたものでした。

 その後、キャンディーズのシングルやアルバムを少しずつ買っていきましたが、そのたびに思い知らされたのは、キャンディーズはシングルB面曲やアルバム曲にも素晴らしい名曲がたくさんあるということでした。
 実際、彼女たちの代表的なヒット曲である「年下の男の子」が当初はB面用の曲として作られ、また「春一番」もアルバムの中の1曲に過ぎなかったのがファンの強い要望によってシングルカットされたといった事例がそれを証明していると言えるでしょう。

 ところで、キャンディーズ・ファンに限らないことですが、一口にファンといってもタイプはいろいろです。まぁ好意的に見ている、といったレベルから熱心なファン、熱狂的なファンまで。
 「かわいい」とか「おもしろい」といった理由でキャンディーズが好きだったという人の中にはヒット曲以外はあまり知らないという人も少なくないでしょう。「年下の男の子」「春一番」は知っているけど、「そよ風のくちづけ」「ハート泥棒」となると、「そんな歌あったっけ?」という人、きっとたくさんいるはずです。このタイプはランちゃん派が多いのも特徴です(というか、どんなタイプでもランちゃん派は多いのですが…)。なぜなら、シングル曲のほとんどでランがセンター/メインヴォーカルでしたし、可愛くて面白くて素敵なお姉さんたちというキャンディーズのイメージも彼女のキャラクターに負うところが多かったと思います。適度に色気もあり、そして、あの魅惑的な声。ミキちゃん、スーちゃんには申し訳ないけれども、やはり最も華があったのはランちゃんだと思います。
 2番人気がどちらだったのかは分かりませんが、まぁ同じぐらいということにしておきましょう。ただ、デビュー当時はセンターを務めていたスーに対して、センターは「わな」1曲だけだったミキの方がより脇役的なイメージは強かったかもしれません。

 しかしながら、キャンディーズが好き、という人の中でも、もう少しレベルアップして、実際にレコードを何枚か買って、じっくり聴き込んだ、となると、僕がそうだったように、それまでとは違ったキャンディーズの姿が見えてくるはずです。
 すでに書いたようにキャンディーズはB面曲にも魅力的な曲が多いのですが、とりわけ後期のシングルB面は傑作揃いです。「あなたのイエスタデイ」(「やさしい悪魔」のB面)、「オレンジの海」(「暑中お見舞い申し上げます」のB面)、「ふたりのラヴ・ソング」(「アン・ドゥ・トロワ」のB面)、「100%ピュアレディ」(「わな」のB面)など。そして、これらは4作連続でミキがリードヴォーカルなのです。彼女のハスキーな声はラン、スーに比べるとアイドルっぽさがなく、よりアーティスティックなシンガーを思わせる声質で、実にいいのです。両親が音大の声楽科教授とピアノ教師という音楽一家に育った彼女はキャンディーズの中では最も音楽的な素養に恵まれ、歌唱力という点においても恐らくNo.1でした(ついでに、ダンスも一番うまかったと思います)。実際、ミキこそがキャンディーズの音楽面でのリーダーだったことは自他ともに認めていた事実です。

 そして、このことはキャンディーズの音楽をアルバム単位で聴けば、より一層ハッキリしてきます。デビュー当初からアルバム曲ではミキがソロをとる曲が多いのです。1stアルバム『あなたに夢中/内気なキャンディーズ』からメインヴォーカルのスーと同格、あるいはそれ以上の活躍ぶりです。意外にもこのアルバムではランが一番目立たない感じで、おそらくそれは当時の3人の歌唱力への評価が反映されているものと思われます(ランが後にメインヴォーカリストとしての地位を築いたのはただ彼女が可愛いからでなく、彼女自身がものすごく努力をして成長した結果でもあります。キャンディーズは常に成長し進化するアイドルでした)。
 とにかく、テレビでの地味な(?)印象とは違って、キャンディーズの音楽においてミキの存在はとても重要でした。最も意欲的に音楽に取り組んでいたのも彼女でしょう。外国曲のカバーでは一番きれいな英語で歌っていたのも彼女ですし、フランス語の曲(「イザベル」)にも挑戦し、みごとな成果をあげています(語学力もすぐれているのでしょうが、何よりも耳がいいのでしょう)。また、ほかの2人に先駆けて作詞デビューを果たしたのも彼女です(「二人のラブトレイン」)。
 最も象徴的なのは解散コンサート前日、キャンディーズが最後のテレビ出演をした時のことです。ファンへのメッセージを求められた時、ミキはコンサートに来る人たちに対して「静かな曲の時は絶対静かに聴いてほしい」と釘をさすのを忘れませんでした。キャンディーズのライヴ音源を聴くと、ファンが熱狂するあまり、音楽をちゃんと聴いていない場面が多々あり、彼女はそれを不満に思っていたのでしょう。単なるアイドルならこんな発言はしません。最後の最後に自分たちの音楽をちゃんと聴いてほしいと言わずにはいられなかった彼女の音楽に対する想いの深さを感じさせるシーンでした。

 というわけで、キャンディーズの名曲にはミキがソロをとる曲が実に多い、という印象を僕は持っています。実際、キャンディーズを単なるアイドルではないアーティストとしてとらえ、その音楽をじっくり聴きこんでいる人ほどミキちゃん派の割合が高まるようです。
 ただし、ここが重要なポイントなのですが、たとえミキちゃん派であっても、ただミキがソロで歌っていればいいのか、といえば、そうではなくて、やはりミキのヴォーカルにランスーのコーラスが加わって、絶妙のハーモニーが生み出される瞬間こそがまさに最高なわけです。
 ミキを含めてキャンディーズの歌唱力は平均的なアイドル以上ではあっても、ずば抜けてうまいというほどではありません。単に歌唱力だけでいえば、キャンディーズの3人よりうまい歌手は当時でも現在でもいくらでもいるでしょう。コーラスグループ・キャンディーズの最大の武器はユニゾンも含めた、その華麗なハーモニーなのです。もちろん、きれいなハーモニーを聴かせるグループはいくらでも存在します。技術的にはキャンディーズ以上という人たちだってたくさんいるでしょう。しかし、あの3人が生み出す声のカラフルな色彩感。これは世界中探してもほかに類を見ない独特のものではないかと思います。完璧に一体化して聞こえるユニゾンからパッと3つの声に分かれる瞬間のカッコよさ、そして美しさ。彼女たちにしか出せない声の色合い。それこそがキャンディーズの魅力なのです。彼女たちの音楽を聴いていけば、キャンディーズが可憐なルックスとは関係なく、声の魅力だけで勝負できる素晴らしいグループだったことが実感できるでしょう。

   つづく



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