風の音楽~キャンディーズの世界♪

キャンディーズ・シングル・コレクション


 キャンディーズは4年半の活動期間に17枚のシングルレコードを出しています。ここでは解散後に発売された「つばさ」を加えた18枚のシングルを紹介します。
 
ちなみに、上に掲出したのはシングルではなく、クローバーシリーズという4曲入りの33回転盤です(念のために説明しておくと、シングル盤は1分間に45回転で、LPが33回転です。切替を間違えると笑ってしまうような歌声で再生されます)。当時はこの手の4曲入りも結構出ていました。


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1.あなたに夢中 作詞/山上路夫  作曲/森田公一  
   c/w なみだ草 作詞/山上路夫  作曲/森田公一 

 記念すべきデビュー曲。出だしからラン、ミキ、スーの順番に声を重ねていって、そのまま3声のコーラスに突入し、3人がユニゾンで歌うパートがまったくないという、コーラスグループとしてのキャンディーズを前面に打ち出した曲で、3人の初々しいハーモニーが聴けます。初期4枚は最年少のスーがセンター/メインヴォーカルで、並び順は向かって左からラン、スー、ミキでした。
 若さあふれるA面に対して、B面はタイトル通り、哀愁を感じさせる内容ですが、スーのリードヴォーカルだけでなく、ミキとランのコーラスにも聴きどころが多く、とても好きな作品です。最後のコーラスは3声にさらにミキの声を重ねて4声になっています。また、曲中でスーのソロにラン&ミキのスキャットコーラスが加わってテンポアップするところで入るドラムが1番はタムで、2番がスネアというのも些細なことながら面白いです。

 ジャケット写真、3人ともお揃いに見えるかもしれませんが、ランがミニスカート、スーがパンタロン、ミキがホットパンツを穿いています(って懐かしい言葉ですねぇ。パンタロン、ホットパンツ…)。

 (1973年9月1日発売)



2.そよ風のくちづけ 作詞/山上路夫  作曲/森田公一  
   c/w 桜草のかなしみ 作詞/山上路夫  作曲/森田公一 

 ファーストアルバム収録の「盗まれたくちづけ」のタイトルを変更し、再録音の上、シングルカットされました。キャンディーズ解散前に発売されたLP5枚組『キャンディーズ1676日』からもシングル曲で唯一漏れてしまうなど(CD化に際して追加収録)、ミキちゃん曰く「カワイソー!」な曲ですが、スーのリードヴォーカルをランとミキが追いかけるようなコーラスが印象的な爽やかな作品です。
 最初の「盗まれたくちづけ」、そして「そよ風のくちづけ」のアルバム・ヴァージョン&シングル・ヴァージョン、さらには「盗まれたくちづけ」のミキ→ラン→スーの順にソロを取るヴァージョンなんてのもあって、それらの違いをあれこれ探求するのも興味深いです。
 B面は郷愁を誘う詞の世界がいかにも当時のアイドル歌謡曲といった作品です。しかし、ミキ、ランがそれぞれ短いソロをとった後、続くコーラスはランとスーがユニゾンで主旋律を歌い、ミキが高音部を担当、最後はスーのソロにミキとランがコーラスを重ねるという展開はやはりキャンディーズならでは、でしょう。
 なお、この2曲は後にキャンディーズのメインライターとなる穂口雄右氏が編曲を担当しています。

 (1974年1月21日発売)



3.危い土曜日 作詞/安井かずみ  作曲/森田公一     
  
 c/w 青春の真中 作詞/安井かずみ  作曲/森田公一

 キャンディーズのシングル曲の中でも最もスピード感あふれるスリリングな曲でしょう。イントロからむちゃくちゃカッコよくて、ドラム、ベース、ホーン、ストリングスなどが一丸となって強力なリズムを生み出し、とりわけコンガの使用が効果的です。ライブでもとても盛り上がる曲でした。でも、売れなかったらしく、当時の売上枚数はキャンディーズの全シングル曲の中でも最低でした。不思議。コーラスはミキが高音パート、ランが低音パートを担当しています。
 B面も爽やか青春ポップスといった風情で、なかなか魅力的です。

 僕はキャンディーズのシングル盤の中でこのレコードだけ所有していないのですが、彼女たちのレコードを買うようになった頃にはもはや地元のレコード店には置いておらず、中古盤店でも見た記憶がありません。音源そのものは持っているので、そんなに熱心に探しているわけではないですが、たぶん一度も現物を目にしていないかもしれません。
 
(1974年4月21日発売)



4.なみだの季節 作詞/千家和也  作曲/穂口雄右     
   c/w 迷える羊 作詞/千家和也  作曲/穂口雄右

 スーがメインヴォーカルだった初期キャンディーズとしては最後のシングル。と同時に次作で大ヒットを生み出す千家和也&穂口雄右のコンビが初めてキャンディーズに書いた曲でもあります。物悲しいメロディーの美しさが印象に残る曲で、晩秋の落ち葉が舞う頃の街の光景(僕の中では吉祥寺のイメージ)が浮かんでくるようです。
 ここまでの4作はあまりヒットに結びつかなかったのですが、いま聴くと、それぞれに魅力があり、曲が売れるかどうか、というのは良い曲かどうか、だけでなく、運とかタイミングとか、色々な要素があるのだなあ、ということをしみじみと考えさせられます。

(1974年9月21日発売)



5.年下の男の子 作詞/千家和也 作曲/穂口雄右     
   c/w 私だけの悲しみ 作詞/千家和也  作曲/穂口雄右

 最初は「私だけの悲しみ」がA面になる予定でしたが、スーに代えてお姉さん的キャラクターのランをメインヴォーカルに抜擢することとなり、A・B面が入れ替えられました。その結果、キャンディーズにとって初めての大ヒットとなり、左手の親指を右手で撫でる振りも大いに流行しました。また、曲のイメージに合わせて、衣装もそれまでのミニスカートからお姉さんっぽいロングスカートに変わっています。
 そして、この曲で定着した向かって左からミキ、ラン、スーというお馴染みの並びが、ミキ中心の「わな」を除いて最後まで続くことになります。
 B面の「私だけの悲しみ」はどちらかというと保守的な歌謡ポップス風ですが、もちろん出来は悪くないです。リードヴォーカルはこちらもランですが、サビの部分からミキがメインになります。

(1975年2月21日発売)



6.内気なあいつ 作詞/千家和也 作曲/穂口雄右     
  
 c/w 恋の病気 作詞/千家和也  作曲/穂口雄右 

 前作に続くお姉さん路線の2作目。そのため、やや二番煎じの感は否めませんが、僕は当時からこの曲、なぜか好きでした。歌詞は女の子が自分の彼氏について、ひとに紹介する内容で、映像的には「名前を言えば誰か、あなたも分かります」と歌うランのところに左右からミキとスーが寄ってきて、ウンウンと頷くところがいいですね。
 前作とともにランがリードヴォーカルで、ミキとスーは完全に脇役に回っており、いかにもコーラスグループ風だった「あなたに夢中」の頃とはずいぶん違ってきています。ランがメインというのが最も鮮明に打ち出されていたのが、この時期でしょう。

(1975年6月1日発売)



7.その気にさせないで 作詞/千家和也 作曲/穂口雄右     
  
 c/w 一枚のガラス 作詞/千家和也  作曲/穂口雄右

 千家&穂口コンビによる第3弾。「スリーディグリーズをチョッピリ意識したようなソウルフルな曲で、色っぽくせまったつもりでしたが、そうでもなかったかナ。コーラスがきまった時の気分は最高でした。振りも気に入っています」(ラン)
 この曲、当初録音されたものは歌詞が過激(?)ということでボツになり、一部歌詞を変えて再レコーディングされています。
 このレコードは夜の海でびしょ濡れになった白いドレス姿の3人のジャケット写真が話題になりました。3人のこわばった表情が印象的ですが、これは撮影時にスーが波にさらわれそうになったというハプニングも影響しているのでしょうか。

(1975年9月1日発売)



8.ハートのエースが出てこない 作詞/竜真知子 作曲/森田公一  
   c/w 冬の窓 作詞/竜真知子 作曲/森田公一

 久々の森田公一作品で、特にファンでなくても知っている曲でしょう。いきなりサビのコーラスを冒頭にもってくる構成にインパクトがあり、歌の世界に引き込まれます。一連の森田作品を聴くと、作曲家としての引き出しの多さに、さすがプロ、と思わずにはいられません。また、キャンディーズという存在自体がこうした職業作曲家にとっても、ひときわ創作意欲を掻き立てる特別な何かを持っていたのではないでしょうか。この曲を聴いてしまうと、今どきのJポップの曲のほとんどが凡庸に思えてしまうほどです。
 なお、2000年に発表されたキャンパラ・ヴァージョン(キャンディーズのヒット曲のヴォーカルトラックをパラパラのリズムにのせたリミックス版)というのがあるのですが、歌詞が一部オリジナルと違っています。ということで、歌詞違いの別ヴァージョンが存在するようです。
 B面はキャンディーズとしては珍しい冬の歌。ミキ、スーの順にソロで歌った後、コーラス、そしてランのソロ、最後はまた3人で、という構成です。

 胸に大きな人形をあしらったセーター姿でシリアスな表情の3人のジャケット写真もすごくいいですね。僕は当時、ミニスカートのキャンディーズより、この写真みたいなジーンズ姿のキャンディーズがカッコよくて好きでした。ベスト・ジーニスト賞というのがありますが、当時、この賞が存在していたら、彼女たちは間違いなく選出されていただろうと思います(ちなみにこの賞の第1回は1984年)。

(1975年12月5日発売)




9.春一番 作詞/穂口雄右 作曲/穂口雄右       
   c/w 二人だけの夜明け 作詞/竜真知子 作曲/宮本光雄

 キャンディーズの代表作のひとつ。もはやスタンダードナンバーといってもいいでしょう。もともとはアルバム『年下の男の子』のA面1曲目に収録されていたものですが、ロック色の強いサウンドで、ファンの人気が高く、1年後の春にリメイクされ、シングルカットされました。
 CDボックス『キャンディーズ・タイムカプセル』所収のインタビューで当時の担当ディレクターの松崎澄夫氏は、穂口雄右氏からスタジオで「面白い曲ができたんだけど」といって穂口氏がピアノを弾きながら歌ったのを聴かされ、「この曲は誰にも聞かせるな、キャンディーズでやろうぜ」と決めたのだと語っています。そして、アルバム曲として録音されたわけですが、キャンディーズの3人も気に入り、ライヴでの反応もよかったため、大里洋吉マネージャーからシングル化しようという話が出たということです。しかし、渡辺プロではシングルを出すには渡辺晋社長の了承が必要であり、シングル化に難色を示す社長から歌詞とアレンジを変えろという指令が出たため、企画会議用に社長の意向に沿って歌詞とアレンジを変更したダミー音源を用意して了承を取り付け、実際にはオリジナルのままの歌詞とアレンジにブラスを加えただけの音源が制作され、発売されました。ライヴでもブラスセクション抜きで演奏されるのが通例で、そこにもオリジナルのスタイルに対するこだわりがあったように思われます。
 なお、この曲のキャンディーズはほとんどユニゾンで歌っており、最後の部分だけハモるというパターンです。リードヴォーカルのランをひときわフィーチュアしていた時代を経て、いよいよ三位一体型キャンディーズの完成といったところでしょうか。
 斬新なA面に比べると、「二人だけの夜明け」はオーソドックスな歌謡曲風で、スーがリードヴォーカルを担当しています。

(1976年3月1日発売)



10.夏が来た! 作詞/穂口雄右 作曲/穂口雄右     
   c/w ご機嫌いかが 作詞/森雪之丞  作曲/馬飼野康二

 詞も曲もジャケットも大好きな作品です。前作に続いて、作詞・作曲を穂口氏が担当。冒頭の「緑が空の青さに輝いて部屋のカーテンと同じ色になっても…」、これだけでもう光あふれる初夏の風を感じ、ウキウキした気分になれます。ちなみに僕も中学生の頃、この曲の影響で自分の部屋のカーテンを明るい緑色にしていました。
 エレクトリック&アコースティック・ギターにオルガン、ベース、ドラムというシンプルな編成によるスピード感のあるロック・サウンドにのってキャンディーズが歌うとても爽やかな曲です。
 ところで、この曲、初めは別の歌手のために書かれた作品だったという話が以前からありましたが、『昭和40年男』2013年8月号の穂口雄右氏へのインタビュー記事によれば、当初は同じ渡辺プロダクション所属の歌手、青木美冴のために作られた曲だったそうです。
 ちなみにジャケットはグァムで撮影されたもの。当時の映像を見ると、3人ともちょっと日焼けして、いかにも夏のイメージです。
 B面はストリングスが印象的なイントロからいきなりサビのコーラス、そしてラン→スー→ミキの順にソロをとって、再び3人のコーラスへ、という構成。バックの演奏も凝っていて、とても魅力的な作品です。
 蛇足ながら、これまで500円だったシングル盤がキャンディーズの場合はこの曲から600円になりました。

(1976年5月31日発売)



11.ハート泥棒 作詞/林春生 作曲/すぎやまこういち     
   
 c/w 今がチャンスです 作詞/林春生 作曲/すぎやまこういち

 これもナチュラルな雰囲気のジャケット写真がいいですね!
 前作までの流れからすると、オーソドックスなアイドルポップスに戻ったような作風で、あまりヒットしなかったこともあり、印象の薄い曲かもしれません。でも、駄作とは思いません。というか、僕は結構好きです。
 この曲も基本的にほとんどユニゾンで歌っていて、「秘密な~の、秘密な~の、秘密な~の~♪」の部分だけハモっています。これをスタジオでキャンディーズが「売れない~わ、売れない~わ、売れない~わ~♪」と歌っていたという逸話が残っています。
 B面の「今がチャンスです」はより多彩なコーラスワークが聴ける作品です。

(1976年9月1日発売)



12.哀愁のシンフォニー 作詞/なかにし礼 作曲/三木たかし    
  
 c/w 別れても愛して 作詞/なかにし礼 作曲/三木たかし

 ジャケット写真からしてこれまでになく大人っぽいキャンディーズ。なかにし礼&三木たかしのコンビによる大人の女性の心を歌った曲です。
 冒頭のスキャットはレコーディングの場でキャンディーズが即興的に考えたものだそうです(そういう場面ではやはりミキがコーラスをリードしていますね)。中間部のランのソロはいつもながら魅力的ですが、後半のコーラスは珍しく高音パートを担当するミキの色が強く出ていて、それが曲全体の大人っぽい雰囲気につながっているようです。
 一方、B面の「別れても愛して」は往年の歌謡曲風のタイトルですが、ストリングスとフルートによるイントロから浮遊感のあるソフトなサウンドで、なかなかの佳曲です。

 (1976年11月21日発売)



13.やさしい悪魔  作詞/喜多條忠  作曲/吉田拓郎    
   c/w あなたのイエスタデイ 作詞/喜多條忠  作曲/吉田拓郎

 吉田拓郎が初めてキャンディーズに提供した曲。作詞は「神田川」で有名な喜多條忠。とても音域の広い難曲で、ランちゃん曰く「うまく音程がとれず、泣きそうになった」とのことで、熱烈なキャンディーズファンだった拓郎氏もレコーディングでは熱心に指導したそうです。ちなみに拓郎氏もアルバム『ぷらいべえと』でセルフカバーしていて、本人が描いたジャケット絵の少女のモデル、一般的には浅田美代子と言われているようですが、僕にはどうしてもランちゃんに見えてしまいます⇒拓郎氏本人がモデルはランちゃんと認めているそうです。
 この曲で、それまでの清楚なお姉さんといったイメージの衣装からアン・ルイスのデザインによるレオタードに網タイツというセクシーな衣装に変わり、僕は「キャンディーズがピンクレディーみたいになっちゃった」と子ども心にあまり嬉しくなかった記憶があります。近所の憧れのお姉さんが人前で大胆な姿を晒しているのを目撃してしまった時のショックといった心境でしょうか。でも、曲は好きでした。
 また、この曲の振リに出てくるデビルサインを志村けんが「ドリフの早口言葉」などの振り付けに取り入れたのは有名ですね。

 B面の「あなたのイエスタデイ」はより吉田拓郎らしい曲で、詞もいいです。そして、リードヴォーカルはミキ。あのハスキーヴォイスが曲のイメージにピッタリで、もう最高です。

 (追記)
 NHKの番組『わが愛しのキャンディーズ』(2006年)の中で「やさしい悪魔」の作詞者・喜多條忠は渡辺プロの渡辺晋社長に呼ばれ、「キャンディーズを大人の女にしてやってくれ」と頼まれたというエピソードを披露していましたが、2009年11月に刊行された『吉田拓郎疾風伝』(石田伸也著、徳間書店)によれば、その場には吉田拓郎も同席していたそうです。また、キャンディーズに網タイツをはかせるというのは喜多條氏の発案で、意をくんだ渡辺社長が同じナベプロのアン・ルイスに衣装のデザインを依頼したという話も紹介されています。

 (1977年3月1日発売)



14.暑中お見舞い申し上げます 作詞/喜多條忠  作曲/佐瀬寿一     
   c/w オレンジの海  作詞/喜多條忠  作曲/穂口雄右

 これもキャンディーズの夏のスタンダードといった感じで、今でも夏になるとよく耳にする曲ですね。キャンディーズならではの、若さがはじけるような魅力を感じさせます。
 テリー伊藤の『歌謡Gメン・あのヒット曲の舞台はここだ!』(宝島社,2005年)の中で、この曲に出てくる「夏の日の太陽がまぶしい渚」の場所について、作詞者の喜多條氏は正解はないと前置きした上で、本人のイメージでは伊豆七島の八丈島や三宅島だと明かしています。いずれも学生時代の思い出の海だそうです。また、歌の中に出てくる「早くあなたに会いたくて、時計をさかさにまわしてます」という不思議な詞については、三宅島の子どもたちが時計を逆さに回して遊んでいた記憶がもとになっていると語っています。
 なお、この曲にはボツ・ヴァージョンもあって、「暑中お見舞い申し上げますPart2」として後に公開されましたが、詞も曲もまったく違います(でも、こちらの歌詞にも「時計をさかさに~」のフレーズは出てきますね)。こちらの作曲はフォークグループ「猫」の常富喜雄氏で、「暑中お見舞い~」よりもむしろ同氏の作曲による「気軽な旅」に似た印象で、詞の内容も含めて「気軽な旅・夏編」といった趣です。イントロや間奏部分に彼女たちの楽しそうな声が入っていたりして、こちらも僕は好きです。
 B面はまたもミキのリードヴォーカルによる「オレンジの海」。シングルでは久しぶりの穂口作品です。A面に比べると、グッと大人っぽい雰囲気で、実は僕はむしろこちらの方を愛聴しています。

(1977年6月21日発売)



15.アン・ドゥ・トロワ 作詞/喜多條忠  作曲/吉田拓郎     
   c/w ふたりのラヴ・ソング 訳詞/森雪之丞  作曲/S.EATON  

 「エレガント」とはどういうことか、この曲を歌うキャンディーズが教えてくれます。それにしても、この時期のランちゃんの美しさといったら・・・。ちなみに、この曲にもアレンジがちょっと地味という理由でボツになったヴァージョンが存在し、のちに「アン・ドゥ・トロワPart2」として発表されています。地味イコール悪い、というわけではまったくなくて、僕はこちらも結構好きです。
 B面「ふたりのラヴ・ソング」はカーペンターズでおなじみの“All You Get From Love Is A Love Song”のカバー。B面の女王(?)ミキの独壇場といった感じで、こちらもたまりません。

 解散宣言後最初のシングルとなった「アン・ドゥ・トロワ」は直後に作曲者の吉田拓郎がアルバム『大いなる人』でセルフカバーしていますが、ラストの「も~戻~れ~ない~」の部分を「さよなら~キャンディ~ズ」と置き換えて歌っており、妙にグッときてしまいます。歌っているのは2番だけなので、初めて聴いた時は「こら、こら、1番から歌おうよ!」と言いたくなりましたが、拓郎さんにしてみれば何はともあれキャンディーズに「さよなら」のメッセージを贈りたいがためのカバーだったのでしょう。先輩アーティストからこんな風に歌ってもらえるなんて、キャンディーズは幸せですよね。

(1977年9月21日発売)



16.わな 作詞/島武実  作曲/穂口雄右     
  
 c/w 100%ピュア・レディ 作詞/島武実  作曲/穂口雄右

 シングルA面としてはこの曲で初めてミキがセンター/メインヴォーカルを担当。向かって左からスー、ミキ、ランという初めての並びでした。でも、ジャケット写真はご覧の通り、ランが真ん中ですね。
 ラテン風のリズムに乗って歌うミキ、衣装も含めてカッコイイです。コーラスもバッチリ(ミキちゃん風に言うとマッニリ)きまっています。A面曲としては「夏が来た!」以来の穂口作品で、穂口氏によれば、島武実氏の書いた歌詞を見た30秒後に曲が出来上がったということです。それだけ歌詞そのものが音楽的だったということでしょう。キャンディーズの楽曲のなかでも際立った個性を放つ作品です。
 また、この複雑なリズムを持つ曲のレコーディングではドラマーの林立夫氏のスタジオ入りが遅れたため、バックトラックの録音はドラム不在のまま敢行され、さすがに有能なミュージシャンたちも悪戦苦闘だったそうです。そこへ遅れてきた林氏がドラムをダビングしたわけですが、初見ながらワンテイクで完璧な演奏をしてみせ、穂口氏に強い印象を残したようです。それが次の「微笑がえし」のレコーディング時のキャンディーズに初見で歌わせるという提案につながったのかもしれません。
 B面はユニゾンやコーラスが主体ですが、やはりミキがソロをとっています。こちらもカッコイイ!

(1977年12月5日発売)



17.微笑がえし 作詞/阿木燿子  作曲/穂口雄右     
   c/w かーてん・こーる 作詞/阿木燿子  作曲/穂口雄右 

 実質的なラスト・シングル。全国のファンの熱烈な応援によってキャンディーズ初のNo.1ヒットとなりました。別れの歌というよりは旅立ちの歌といった方がいいのでしょう。心の中を春風が吹き抜けていきます。
 歌詞に過去のヒット曲のタイトルが織り込まれ、3人が交互にセンターに立ちながら歌っていました。その結果、向かって左からラン・ミキ・スーとミキ・スー・ランという初めての並びを見ることができます(この結果、キャンディーズ史上唯一実現しなかったのはスー・ラン・ミキの並びということになりますが、実はこれ、3人がデビュー前にスクール・メイツのメンバーとして1972年のNHK紅白歌合戦で踊った時の並び順なんですね。また、NHKのマスコットガール時代にもスー・ラン・ミキの並び順で歌っている映像が残っています。ってことは、これがオリジナルの並び順?)。
 なお、この曲ではキャンディーズが楽譜を初見で歌っているという事実が後に作曲者の穂口氏によって明かされています。初めて目にする楽譜を、リハーサルなしに歌って、これだけのコーラスを決めるほどのレベルにまで当時の3人が到達していたということです。
 B面の「かーてん・こーる」も究極のキャンディーズ・コーラスが聴ける、とても美しい曲。まさに絶品です。この曲を聴くと、キャンディーズが声だけで勝負できる素晴らしいコーラスグループだったことが解ります。伊藤蘭さんがこの曲も初見で歌ったとラジオ番組で語っていました。

(1978年2月25日発売)



18.つばさ  作詞/伊藤蘭  作曲/渡辺茂樹     
   c/w グッド・バイ・タイムス 作詞/阿木耀子  作曲/穂口雄右 

 キャンディーズが解散コンサートで一番最後に歌った曲。解散宣言の直後にランが作詞し、バックバンドMMPの渡辺茂樹が曲をつけた作品です。ライヴでは最初からユニゾンで歌っていましたが、レコードではミキ→スー→ランの順にソロで歌ってコーラスとなります。リアルタイムのファンにとっては今でも涙なしには聴けない曲です(とりわけ、ランの言葉から始まり、曲中のセリフ部分での「本当に私たちは幸せでした!」という3人の叫び声、そして歌い終わった後の3人の泣き声まで収録されたファイナルライヴ・ヴァージョンを聴くのは僕みたいな出遅れファンでもかなり覚悟が必要だったりします。その映像版はさらに辛いッス。伊藤蘭さんも最近のインタビューで今でもこのシーンを見ると泣いてしまうので、あまり見ないようにしていると語っています。娘さんも同じだそうです)。
 B面の「グッド・バイ・タイムス」も完成度の高い名曲。エンディングを聴いていると、だんだん遠ざかっていく3人の後ろ姿をただ立ち尽くしたまま見送っているような、寂しい気分になってしまいます。で、もう一度キャンディーズに会いたくなって何度もリピートしてしまうわけですね。
 解散後に発売されたため、キャンディーズ18枚目のシングルと言えるかどうか疑問ですが、中学生だった僕は解散したキャンディーズのレコードがまた新たに出たということが単純に嬉しかったのを覚えています。公式発売日は11月21日となっていますが、当時の日記によれば僕が買ったのは18日でしたから、まさに飛びついたという感じですね。

(1978年11月21日発売)


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